前回の続きで、研磨とグロスアーマーコーティングの施工です。
基準となるルーフの研磨のおさらい
固着した汚れを落とすことと、ドアハンドル部分の傷の状態からバランスを考慮して軽研磨で進めていくことを選択しました。前回お伝えしたルーフの一部分を研磨して、そこを仕上がり基準に他の部分を研磨していきます。
ボンネットの研磨
ルーフが完了すると、続いてボンネットの研磨に移ります。
ボンネットは左右で研磨の深さを変えてみました。運転席側(右前)は傷を追って少し多めに研磨していて、助手席側(左前)は軽研磨の状態です。
画像で表現できているかどうかわかりませんが、肉眼で見ると傷の量と深さが違うのがわかります。今回は境目にマスキングテープを貼ってクッキリとは分けずに、成り行きで左右を分けています。これが完成時にどのくらいの違いになるのか、太陽光の下で見るとどう違うのかはやってみないとわかりません。
塗装面をできる限り減らしたくなかったので、傷ひとつないというよりもスポットライトを照らして比較すると違いが判る程度です。
ボディーサイドの研磨
続いてフェンダーやドアなどのボディーサイドを研磨していきます。
こちらはドアハンドル付近の研磨前と研磨後です。これくらい傷が消えれば、他の部分とのバランスが取れると思います。ドアハンドルのキワの部分は研磨が困難な部分ですので今回は触っていません。こういった研磨が困難な部分は、傷や汚れ、シミを付けないような普段の取り扱い方が大切になると思います。
リアゲートもハンドル付近には同様の傷が多数付いていたので消して、そのほかの部分はバランスを取って研磨しました。
研磨していて思うこと
今回の研磨は固着物を落とすことが主でした。この目的で研磨することはなかなかないと思います。研磨の多くは傷を目立たなくすること、傷をなくすこと、そして塗装面の凹凸を極限までに少なくして陶器のように滑らかな表面にすることが目的になります。しかしいずれも塗装面を減らすことには変わりがないので、できる限り研磨で減らす塗装面の厚みを少なくしたいのはオーナーも施工者も同じだと思います。
そして研磨だけでなく普段の使用による傷(乱雑に扱ったり付けようとしているのではなく、洗車やドアの開け閉めといった何気なく行う日頃の車への接し方で付いてしまう傷)も塗装面を減らすことに変わりありません。
最初は細かな傷だったところに水分が滞留し、空気中の汚れを吸着して乾燥して定着します。そうするとさらに水分が滞留しやすくなり汚れが定着しやすくなります。新車で購入して最初は汚れにくかったのに1年くらいするとよく汚れるようになった(汚れが落ちにくくなった)というのはこのサイクルに入っていることが考えられます。
その段階でよく行く車関係の場所(ガソリンスタンドなどが多いと思います)で聞くと、撥水効果などを謳った「何か」を塗ると水と一緒に汚れをはじくから汚れなくなると勧められてそのまま塗ってしまうと思います。すると傷+汚れ+シミ+「何か」の層が形成されて、何度も塗っていると固着した層が出来上がってきます。大抵この「何か」は塗装面から落ちにくいように作られているので、普段の洗車や水ジミ除去のケミカルでは落ちることなくその下の汚れやシミの層を守る形になります。こうなると本来の塗装面をよみがえらせようとする場合には研磨くらいしか方法がなくなってしまいます。
ですので、塗装面に傷や汚れやシミが乗る前に、新車のうちに効果のあるコーティングを行なうことが最終的にかけるコストと美しさを保つ効果に優れると思います。どうしても新車のうちはまだ綺麗だからコーティングは汚れが目立ってきてからでいいと思ってしまいます。しかし傷と汚れとシミの定着は少しずつ進行するので、気付いた時には大きな差になって現れることが多くなります。そうすると今度は、あと何年かしか乗らないかもしれないから・・・と思うようになってしまい、悩みと我慢の日々が続くことになります。あの時コーティングしていればなぁとか、あの時ちゃんとしたものを選んでおけばなぁとか思ってもらいたくないので、ぜひ新車での正しいコーティングをお勧めいたします。
コーティングを施工して完成
下地を整えたらグロスアーマーを施工していきます。
コーティングは簡単だというのを聞きますが、下地を整えるところまでくればコーティングは簡単と言えるかもしれません。ただし、今回の連載でお伝えしたようにコーティングを塗るまでの工程が簡単ではないと思います。工場で生産された直後であればまだ個体差も少ないでしょうし、環境を整えれば標準化された作業になるのでまだ良いかもしれません。これがひとたび屋外に出れば、人の手にも触れるでしょうし風雨にもさらされます。その時点で個体差が生じますし、納車された後は無数の不確定な環境要素があると思います。(樹木が近くにあるとか、猫がボンネットに乗るとか、幹線道路や線路が近いとか。)そして普段の使用を経るとさらに多くの要素が絡んできます。
効果のあるコーティングには整った下地が必要ですが、それまでの使用歴の中で塗装面を劣化させる要素が多ければ多いほどマージンを取った下地処理が必要になるのはこのためです。そういった意味でも新車のうちにコーティングをするほうが良い選択と思います。
太陽光の下で見ると白がよりクッキリとした白になったと思います。
ボンネットも屋内では差があるように見えましたが、屋外では若干色味が違うように見える気がするもののよほど目をこらして見ないとわからない程度の差しかありませんでした。この年式でこの差でしたら、好みの問題になると思います。
グロスアーマーの汚れ落ち
グロスアーマーのメリットはやはり洗車時の汚れ落ちの良さだと思います。
1週間経過したのちの洗車時の様子ですが、洗車前の予洗い(最初に高圧洗浄機で表面の砂埃や汚れを落とす工程)でほとんどの汚れが落ちてしまうので、洗車がとても楽になります。1週間程度ですのであまり汚れていない感じでしたが、表面には黒く見えるほどの汚れが付着していました。これが落ちずに付き続けると思うと、知らない間にどれだけ艶や輝きを失っていくのかおわかりいただけると思います。
これで今回の9年落ちの軽自動車に研磨をしてグロスアーマーを施工する連載は終わります。
私は施工して終わりのコーティングではなく、お客さまの利益を一番に考え、お客さまの真の願望である「ずっとキレイな状態で愛車に乗っていたい」を叶えてお困りごとを極限まで少なくしたいと考えています。そのために、ご自分でも可能な愛車のメンテナンスのノウハウや便利な道具をご提供していきたいと思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。